16 − インハウス(社員)デザイナーは意識的にもサラリーマン化していると言われて久しいです。アドバイスがありましたら、お願いします。
「工業デザイナーは、たいていは大企業のメーカーのサラリーマンになることから始まります。特にカーデザインは外部から関わるチャンスは、そう多くはありません。しかし、営業や財務、生産などのセクションは効率の世界ですが、デザインはクリエイティブという別の価値観を持つ世界です。同じ就業規則で縛ることは難しいと思います。しかし、ナイキのデザイナーのように企業人でありながら、自由なデザイン活動が実現出来ていることもありますから、企業個々の考え方の問題になると思います。」
17 − 坂井さんの登場によってコンセプターという概念が認識されました。また、広告制作等に比べてが与えられた存在がありません。人材の有無は別問題として、組織と権限の在り方に提言があればお聞かせ下さい。
「多くの事例は知りませんが、トヨタは商品企画の中にコンセプターの名刺を持つ人が多くおり、プロダクト(CAR)デザインのアートディレクターのような権限が与えられているようです。個人的な見解ですがデザインというのは、たんに民主的なチームワークというよりは、誰かが権限を持ち潔く決めることが必要だと思います。それがコンセプターであってもいい、デザインとはデザイン画を描くことだけではありません。かつてのauのデザイン・ディレクターの「こむた啓博」さんのようにデザイン画を描かないデザイナーがもっと組織にいてもいいわけです。」
18 − 最後の質問になりますが、ここ10年、ユニバーサルデザインやサスティナブルデザインなど、プロダクトデザインにおける新しい課題や概念が浮上しています。現代において、もっとも重要と考えられる課題とはなんでしょう。また、未開の概念があるとしたら、それは何ですか?
「ユニバーサルデザイン、サスティナブルデザイン、エコデザインなど、社会全体の問題にメーカーやデザイナーが、これらの問題解決に関わることは当然なことだと思います。つまり産業システムそのもののデザインや、マーケットそのものをデザインすることが、デザインにもたらす未開の概念かもしれません。真に様々なたくらみを想起することがデザインの持つ重要な社会的な機能だと思います。70年に発刊された「ドムス」にソットサスが書いた面白い記事があります。「モノをデザインするときに、人が何かに気づき、自分を解放する助けにならなければならない、そして人に内なるときめきを感じさせる機能をものに与えることだけを考えなければならない。」やはり60年代は今というデザインの時代の始まりで歴史は繰り返されるということでしょうか。
